「ほら、そこにいる」
           産経新聞書評02/11/12



 
お母さんにどなられ、 むしゃくしゃしている和彦は、学校でものけ者にされる。
その時、飛んできた羽虫が、和彦の耳の中に入ってしまった。
 驚いた和彦が虫を追い出そうとすると、耳の奥から声が聞こえる。
「おれは人の耳で生きる耳虫だ。追い出そうとすると、鼓膜を破って脳みそまで食べてしまうぞ」
 そうして、耳虫は恐ろしい命令をしはじめる。
(妖怪耳虫・浜野えつひろ)が面白い。

 不思議な転校生の話もある。マリのクラスに線香の匂いがする転校生がやってくる。その転校生が、ある日マリにいう。
「帰り道に気をつけて。トンネルを出た所では立ち止まった方がいいよ」
 そのおかげで、マリは命拾いをする。転校生は予知能力があったのだ。
 だが、交通事故に遭って死んだのは転校生の方だった。
「なぜ?」信じられないマリ。
(証拠を見せろ!・大塚篤子)

 他に表題作『プールで死者がよんでいる』(国松俊英)など、学校の怪談が11話。
その内1話は漫画というのも面白い試み。
シリーズ全5巻で、この後も、腕におぼえの人気童話作家たちが続々登場する。
 ここだけの秘密情報だが、シリーズには、実際に霊を体験した作家も執筆をするらしい。
怖さはますますさえわたるかも知れない。
もっとも「朝の読書に最適」とあったが、私なら朝から怪談は読みたくない。
だが、朝なら、怖さが半分で丁度いいだろうか。
いや、朝でもやっぱり怖いか。
「ほら、そこにいる」と指さされでもしたら。

(児童文学作家・越水利江子