また会う日まで
越水利江子
NHKでたぶん20年間は放映していた「大草原の小さな家」は、
古き良きアメリカ開拓時代の家族の物語です。
番組の中で幼かった少女が、ドラマの中で一人前の女性になり
母になるという点では、日本の「北の国から」と同じ超ロングラン
の連続ドラマといえます。
家族三代を描いたその物語の中で、私は後には祖父になって
しまうお父さんチャールズが大好きでした。
マイケル・ランドン演じるチャールズは(彼は監督でもあった)、
穏やかで、誠実で、理性的で、働き者で、家族を愛する敬虔な
クリスチャンの夫であり、父親でした。それは、もはや現代では
描けないキャラクターであるかも知れません。
いわば、アメリカ人情小説。一連のドラマは、原作の長編より
ずっと面白く感じました。ドラマを見て何度も涙しました。
ハンサムで優しいチャールズに理想の夫像、理想の父親像を
重ね合わせたのは、若き日の私だけでないと思います。
最初の頃、チャールズは真っ黒なくせっ毛の若々しい父親でした。
それがいつの間にか白い髪になりました。成長した娘にこどもが
でき、おじいちゃんと呼ばれるようになっていました。
それでも、チャールズは豊かで若々しく魅力的でした。
それなのに、チャールズを演じたマイケルランドンは十数年前に
ガンで亡くなっていたのです。
つい先日、私はそれを知りました。
ショックです。
親しい友人や家族を失ったような気がします。
私のこれまでの半生は、それほど不幸ではありません。
けれども、一般の人よりは厳しいものだったように思います。
そんな中で、チャールズは、いつも一つの灯火でした。
まだ若く未熟だった私に、人間は捨てたものではないと、励まして
くれる温かい友人でした。
人生は辛く苦しい。
けれども、生きる価値があるのだと、チャールズは毎週語りかけ
てくれました。あの笑顔で、あの優しさで、あの黒い澄んだ目で。
NHKは、あの番組を何度となく再放送をしています。
機会があれば、若き日のチャールズを、ぜひ見てください。
そして、年取ってゆくチャールズを静かに見つめてください。
人生の哀しみと喜びが、そこに見えてくるはです。
チャールズ。
あなたのような男性に出会うのが、若き日の私の夢でした。
でも、今の私は、あなたとはまったく違う男性を愛しているのです。
でも、やはり、あなたに出会ったのだと思います。
なぜなら、私の中に、あなたがいるからです。
あなたから学んだ愛が、私の中に、たしかに息を吹き返したからです。
あなたに感謝を贈ります。
いつか、そう遠くない日に、
また、会う日まで・・・。
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