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「続 漫画少女時代」           
                     越水利江子


私はなかなか漫画もうまかった。
もう誰も確かめることができないので、言いたい放題である。
このHPを御覧の方には意外かも知れないが、得意なのはギャグ漫画ではなく、ストーリー漫画だった。
講談社や集英社の漫画大賞などで、そこそこいいところまでいった。
入選したことも何度かある。
といっても、漫画を仕上げるというのは、ほんとに大変である。
イラストレーターなんて、めじゃない根気がいる。
時間も労力もはんぱじゃない。
そこで、目に付いたのが、講談社原作プロット大賞。
漫画の原作募集だから、絵はいらない。
これはらくそうだと思って、原稿用紙を買ってきたのは高校生の時だった。
そうして、でっち上げたのは、特派員の父を持つ少女がどこやら紛争国へ行き、争乱の渦中で出会った美少年と危機を乗り越える物語。
今なら、とても書けない空想だけに頼った荒唐無稽の話である。
おまけに、何回も消しゴムでこすったので、原稿用紙に大きな穴(横1センチ縦3センチ大くらい)があいてしまった。
しかし、新しく買い換えるのももったいないと思って、そのまま送った。
なんと、それが入選した。
世にどれほど公募があるか知らないが、
原稿用紙に大穴をあけて入選した例は、たぶんないだろう。
これで、漫画より文章の方がおいしいぞと、甘いことを思ってしまった。
今となっては大間違いだが、思いこみとは恐ろしい。
ちょうど、中学から高校にかけて、私は文庫本を読み出していた。
これが、時代小説ばかりである。
行きつけの書店の時代小説の文庫の棚は、全部制覇した。
山手樹一郎、司馬遼太郎、角田喜久雄、柴田練三郎、南条範夫、笹沢佐保、池波正太郎、海音寺潮五郎、子母沢寛、山田風太郎、早乙女貢に至るまで手当たり次第だった。
その中に、山本周五郎があった。
正直言って、深く感動した。
物語に、これほど人を癒す力があるとは知らなかった。
こんな物語を書いてみたいとも思った。
それが、私の第二の出発になった。
思春期のそれらの読書は、大人になってからのどれほどの読書もかなわない。
理性で読んでいる今は、ハートで読んでいたあの頃に、どうしたって太刀打ちできるはずはないのだ。
子どもの頃に、どうしても本を読まねばならないとは思わない。
だが、思春期には読むべきだ。
確信のように、私はそう思う。
酒と読書、これは人生の薬味である。
なくても飢えはしないが、美味しい人生には欠かせない。
触れずに死ぬのももったいない。
体質に合わない人以外は、ぜひ、おすすめする。