西日本児童文芸のつどい2002
(つどい報告その1)
02/10/16
written
by 越水利江子
10月13日、三回目のつどいが開催された。
メイン講師に後藤竜二さん、シンポジウムと分科会に、冨安陽子さん、横山充男さん、竹内もと代さん、浜たかやさん、芝田勝茂さん、大塚篤子さん、野村一秋さん(プラス越水利江子)の9人の講師を迎えてにぎやかなつどいとなった。
ゲストにはあまんきみこさん、児童文学者協会大阪支部長の中川健蔵さんをお迎えし、主催者として児童文芸家協会会長川村たかしさん、理事長の岡信子さんも駆けつけてくださった。
一方で、受講者にも多くの新しい書き手が参加され、会場は2,3歩、歩けばプロ作家にぶつかるという、かつてない凄い会となった。
総参加者187名、懇親会93名の雑踏のような集まりでその確率だからとんでもない。
第一回のつどいの折は、300人がつどったが、これは高槻市で行われ、市の協力による高槻市民特別チケットの参加者が100人はいたし、絵本の会等の協力もあったので、今回の実行委員だけで動員した187人という人数は大きな物であると思われる。
更に、参加者のほとんどが書き手であることの凄さを思えば、ここ十年来、この三回のつどいをのぞいて、こんな集まりがあっただろうか。
7,8年前に、児童文学者協会の神戸大会が二度ほどあって盛会のうちに終わったが、あの折も、私個人の印象ではこれほどではなかった。
今回の成功のすべては、つどいの実行委員と参加者たちの温かい協力とチームワークがあったからだ。
なにより、境界を越えた書く者同士の大きな握手があったからだと思う。
児童文芸家協会員、児童文学者協会員、あるいはどちらにも所属してはいない作家たちが、共に、つどった。この成果は大きい。
そういう会にさせてくださった児童文芸家協会の懐の深さに、心から感謝したい。
かつての児童文学者協会の神戸大会は素晴らしい会だったが、まだ閉ざされた会だった。
児童文学者協会という錦の御旗だけが目立ったし、首都偏重で西の作家の多くは縁の下の力持ちだけに回った。
今回のつどいでも、西の作家の多くが縁の下の力持ちをしたが、それは少し意味あいが違うように思う。
どう意味が違うか、それは、多数の作家が主体性を持ってあらゆる下働きをし、講座も受け持って、八面六臂の活躍だったということだろう。
児童文学者協会の神戸大会では、滋賀県の作家今関信子さんが全ての重荷を背負われて、それを見かねた西の作家たちがひそかに下働きを引き受け、なんとか会が成り立った。
あれではいけないと、私は思う。
今関さんの心労、実行委員の人たちのご苦労を思うと、今でも頭が下がる。
そういうことは、たぶん東京からお越しの児童文学者協会の講師の方や、ゲストの作家さんたちには見えなかっただろうと思うので、ここであえていう。
関西大会をやるのなら、まず西の主体性を大切にして、それから、勝手にやれではなく援助もしていただきたい。
今回の児童文芸のつどいは、その両方が満たされたゆえの成功なのだ。
そして、無名であるかも知れないが、西の作家にも良い書き手はいるというのを知ってほしい、いや、知ろうとしてほしい。
誰もが最初は無名だろう。
首都からはずれた地方の作家は当然無名だ。
まず、「有名」ありきでは地方の書き手は育たない。
今回のつどいにも、西地区の作家として今関さんを招聘させていただきたかったのだが、スケジュールのご都合がつかず、お招きできなかった。
けれども、実行委員の一人として、今回のつどいを「開かれた会」にできたことを心から誇りに思っている。
狭い児童文学界、互いに協力し合わずにどれほどのことが成せるだろう。
はからずも、今回のメイン講師の後藤竜二さんは児童文学者協会の理事であり、組織部を担当されている。
その後藤さんが「これほど作家たちが働くのは素晴らしい。なにより、参加者や実行委員、あちこちからの熱気がすごい」と言って下さった。
なによりの誉め言葉と、みな感動した。
どうか、これを機会に、つどいや講座の在り方を考え直してほしいと思う。
最初に、協会ありきでも、著名作家ありきでもない。
支える者のパワーの拡大こそが、今後の児童文学界を支えていくのだということを熱い言葉として伝えたい。
参加者は、講師の名ではなく、質に感動してくれるのだということも、当然ながら、書き添えておきたい。
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