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日本児童文芸のつどい2002
      
(つどい報告その3)
                    02/10/20
               written by 越水利江子


ほぼ200人の作家や書き手が集まった会場は、朝からハイテンションだった。
背後で「きゃあっ」という声があがる。
振り向くと、後藤竜二さんが通り過ぎるところだった。
前方でも「きゃあっ」という合唱が聞こえた。
実行委員長の横山充男さんが何かを指図しているところだった。
「きゃっ、おやぶん!」
エレベーターの前にいた人たちが一斉におじぎをした。
(おい。いったい、何の集まりやねん)
思わずツッコミながら見ると、芝田勝茂おやぶんが降りてくるところだった。
「こしみずう〜浜さんはまだあ〜?」
なんとも優美な竹内もと代さんが、天女のような衣装で声をかけてきた。
「浜先生、午後からとちがうんやろか」
いってると、行く手から、ロマンスグレーの紳士が美女を伴ってくるのが見えた。
浜たかやさんと、愛弟子のミョーコちゃんである。
その背後に、影のように寄り添っているのは、見過ごしてはいけない、かの野村一秋さんである。
「ねえ、浅田君、だいじょうぶかなあ」
そうきいてきたのは、百万ドルの瞳の大塚篤子さん。
「ふらふらしてるんよ、それが」
私はこたえた。
この日、浜たかやさんと大塚篤子さんの分科会を司会する予定の浅田君は風邪を引き込んで40度の熱をおして出てきていた。
「まったく休みゃあいいのに。近寄らないようにしなくちゃ。またうつるから」
天女竹内さんがいった。
彼女は浅田君に風邪をうつした張本人である。
その責任感がいわせるのか、なんとも温かいお言葉だ。
「抗体のあるヒトは、もう、うつらないですよ。竹内さん」
すかさずいったのは勇気あるゴッドさんだった。(いや、蛮勇というべきか)
「あっら。そっか。あははは」
天女は高らかに笑った。
やはり、天女もハイテンションらしく、私はゴッドさんの幸運をひそかに祝福した。
いってるうちに、川村たかしさん、岡信子さん、戸田和代さん、こやま峰子さんという、児童文芸家協会のヘッドともいえる人たちが到着された。
とたんに、陣中に緊張がみなぎった。
そこへまた、あまんきみこさんと冨安陽子さんという二大女性作家が陣屋入りなさった。
竹内さんとご挨拶をなさっているのを眺めていると、三大天女降臨の図といったところか。なんとも華やかである。
この頃には、エレベーター前も、廊下も、会場も、もう興奮のるつぼと化している。

やがて、このつどいのメインイベントである後藤竜二さんの講演が始まった。
(内容についてはもったいないから書きません)
講演が始まってしばらく、後藤さんがしきりと咳払いをなさった。
演台には、ミネラルウォーターが栓を切らずに置いてある。
「お水をコップに注いで置いてあげれば良かった」と、私は後悔したが、講演途中に舞台に上がるワケにもいかなかった。
心配をよそに、後藤さんはそのままお話を続けられた。
いい〜お話だった。
ことに、後藤さんのなぜ書くかの原点となった『九月の口伝』のエピーソードには
深く感動した。
本を先に読んでいたにかかわらず、感動を新たにした。

講演が面白いと本がよく売れるという。
その通りに、後藤さんの本はほとんど完売した。
講師全員を総合すると、1時間ほどの購買時間に170冊が売れた。
(これは凄いことです)

午後は、シンポと各分科会に別れてのつどいとなった。
これについては、それぞれの報告を待たねばならない。
そして、そして、ついに、待ちに待った懇親会!
川村たかし児童文芸家協会会長と岡信子理事長のご挨拶があった。
そして、詩人であり、編集者でもあり、ハーモニカ奏者でもあるもり・けんさんのミニコンサートも素晴らしかった。
それぞれの分科会報告があり、同人紹介があり、児童文学者協会大阪支部長の中川健蔵さんのスピーチ、元祖天女のあまんきみこさんのスピーチもあった。
その間も、会場のハイテンションは続いており、そこここで「きゃあ」という声や笑い声がおこる。
正直言って、その華やかさは、これまでどの児童文学の集まりにもなかったものだ。
お勉強会なのだから、もちろん、いっぱい学習した。
けれど、それだけではない、この華やかさ、楽しさはなんだろう。
三回目のつどいだが、回を重ねるごとに、このなんともいえぬ華やかさ、楽しさは増していっている。
去年来た人が、新たに友だちを引き連れて来てくれる。
今年来た人は、きっと来年も来ます!と宣言してくれる。
どうやら、児童文芸のつどいは新たな役割を果たし始めているようだ。
書き手の横のつながりはむろんだが、そういう一つの形に押し込めてしまえない何か。
言葉にすれば、
「児童文学はものすごく楽しい!」
とか、
「児童文学は何よりも素晴らしい仕事である!」
とかいう実感である。
その実感が、集まった200人の人たちの心に深く豊かに浸透し始めている。
私は、確かにそんな気がする。
そうではないだろうか、みなさん。