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楽しいシンポジウム
(児童文芸のつどい2002報告その4)  
               02/10/28
             written byみょーこ

 

@面白かったんです、シンポジウム。

思ったよりずっと・・・と書こうとして、考えてみたら、来る前からシンポジウムはけっこう楽しみでした。
それはたぶん、「横山氏と富安氏の顔合わせって、異色で面白そうヤンケ」とか「オ、もと代さんの司会? 受賞パーティーのときの殊勝な顔しか知らないのだから、これは見のがせません!」とかのヤジ馬根性だったのかもしれません。

しかし午前中の講演のあと、みんなで食事に出て、もう一度会館へ帰ってきたときは、言い知れぬ不安におそわれていました。
なにしろ連れが一人、また一人とイソイソと分科会に消えていき、わたし一人残されたわけで・・・。

『この重い扉をあけたら、観客3人くらいしか、いなかったりして・・・そしたら、3人対3人の面接じゃん。勘弁して・・・』なんて、本気で考えていた神経質な参加者がいたことを、主催者が知らなかったのは、幸いなことです。

 もちろん、そんな心配は杞憂で、たいへんな盛況だったわけですが、「居心地、い!」と、感じたのは、始まる前でした。
横山氏が、何やらとてもリラックスして(それは、フリだったかもしれないけど)、ジョークらしきことをつぶやいた時。ドっと会場のみんなで、まず笑ったんですね。
 それはきっと「今日のシンポはこんな感じで、やらしてもらいま・・・」というサインである、と解釈しました。

  「そっか。楽しむのだ。シンポジウムって・・・!!!」
 だから、そういう心がけで聞きました。(勘違い?)

 Aまず『声』が絶品でした。

もと代さんの声、流れるようで、なんて気持ちいい。
富安さんの声、マイクを通して、あんなにきれいな声は初めて。つまり気持ちいい。
横山さんの声、
NHKのアナウンサーよりよっぽど響いて、歯切れよく、気持ちいい。
ということで、どこまでいっても・・・気持ちいいあとに、気持ちよくて、気持ちいい。
誰がしゃべっても、気持ちいい。声だけじゃなく、発音も、間も、3人とも絶妙。
偶然とはいえ、持って生まれたものだとはいえ、何なのこれ? 
 すごいことだと思いました。
(だって、観客はこんなことにも、癒されている)

  Bこっそり友人づきあいしたってことかな、このシンポは。

その1「わたしの家系は、ホラ吹きなんです」と富安氏は言いました。

『わたしの出会った妖怪のこと』を毎日語ってくれるおばあちゃんがいて、ライオンの獲り方を手取り足取り教えてくれる父さんがいて、次々と、新しい子どもの本を買ってきてくれるおばさんがいて、『隠れているツルと亀の有り様を想像しすぎて(鶴亀算にて)算数を放棄する』陽子をそのまま認めてくれる母がいて。
(何という豊かな環境!) 

その2「出身地は、ちょっと前まで大きい声では言えなかったような・・・混沌とした街」と横山氏は言いました。

横山少年が育った地域は、万引き少年がウヨウヨいて(自分もか?)、意地悪な立ちションばあさんがいて、頭の狂ったネエちゃんが踊り、サツから逃げてるニイちゃんがいて。
つまりは、何でもありのつわもの達の住む町だったらしい。
(何という豊かな環境!!)

 *ついでに言うと、いくらでも呑めて翌朝二日酔いしていない、世にもうまい故郷の水空気で、育くんだサケとサカナっていうのが、うらやましすぎなんだよねえ・・・ 
 富安氏と横山氏の・・・ある意味、対照的な子ども時代が語られまして。
率直に、ユーモラスに、そして深く、ですね。ああ、面白かったなあ。
あたかも二人の友になったような気分で、空間の隔たりも忘れて、もう夢中で、全神経を傾けて、聞いてしまいました。
(疲れるほど、面白いということがあるんですよ、世の中には>某雑貨さま)

 二人の話に大笑いしたり、シンミリしたり、感動したりして、シンポは終って・・・この面白さって一体何だろう・・・って心にひっかけながら、帰りの電車に乗っていました。中で、横山氏の本を読んだんです。
読み終えて、「わたし、少年を生きた!!」と心で叫んだとき(その顛末はいつか掲示板に書いたけど)、答えがわかりました。

 要するに欲ばりな自分は、「いくつもの人生を生きたい!」
という欲望でいっぱいだったんですね。
で、(シンポの中で)わたしに洗いざらい語ってくれて、二人の人生を分けてもらえたことが、感動だったんです。面白かったんですね、満足だったんですね。

 ということで、労せずして(お金は出した)二人の作家とお友達になれて(極めて一方通行でも)、良い思い出を作ってきました。
 こういう、すべての流れを演出したもと代さんには、大拍手! であります。